当時3歳の息子をママチャリに乗せ、友人の祖父に線香をあげにいく道中、あの揺れにあった。電線や電柱の揺れ、足元が歪んでいくような未体験の感覚に慄いたが息子はどうして僕が自転車を一時停止したのかわからないといった様子だった。友人宅を後にしてから帰宅すると、食器棚の上に並べていたワイングラスが床に散乱し粉々になっていた。テレビは津波によるおぞましい光景。何が起こっているのか処理するのに時間がかかった。僕はその後、初めて帯状疱疹になった。症状は重く、上司の計らいで1ヶ月ほど休んだ(後にも先にもそんなに休んだことはない)膿んだ無数の傷口を指先で潰され続けるような痛みと一週間ほど格闘した。特に首が酷くてその後肌質が変わってしまうほどだった。地震があるとその時のことを思い出す。新聞の一面の、津波により更地になった、おそらく住んでいた家屋があったであろう場所に座り込み泣き濡れた顔で呆然としている女性の顔を思い出す。